マイナンバーについて語る前に欧米各国では
日本のマイナンバー制度はたいへん便利な活用方法を目指しながら、どうも賛否両論があるようです。 そもそも戸籍制度は海外にないのか、という観点では、中国、台湾、韓国に制度が「あった」ものの、それぞれ変貌をとげていることを書いてきました。 日本の制度についての課題などに入る前に、「先進国」である、欧米の状況をみてみましょう。
・アメリカ;出生、婚姻、死亡の登録は州または郡の機関で保存されているだけで、アメリカ全体で統一的に収集している機関はありません。そのため、家族関係や相続人の追跡は不可能です。自分のことを自分で証明する場合に利用するだけです。その代わりに個人を特定するものとして、社会保険番号が利用されています。
・イギリス;各地方の身分登録機関から3ヶ月ごとに、中央の身分登録機関に送られてきた出生、婚姻、死亡の身分登録を、各事項ごとに名前のアルファベット順に整理して、索引を作り、利用者はこの索引から調べたい人の身分登録を検索できるようになっています。
・ドイツ;出生、婚姻、死亡の各登録簿の他に、家族簿という制度を設けています。 家族簿は婚姻家庭ごとに作成され、住所を移転すれば、そのたびに作り直します。
・スイス;出生、婚姻、死亡の各登録簿の他に、家族登録簿があります。 ドイツとは異なり、婚姻家庭に限定されず、婚外子も記載されます。登録簿の名義人の家族を順次記載するシステムで、 出生、婚姻、死亡の各登録が本籍地に送られてきます。日本の戸籍に似ています。
・フランス;出生、婚姻、死亡の各登録簿の連絡を可能にするために、出生証書の欄外に、婚姻、死亡、婚外子の認知、養子縁組、離婚などを付記し、個人については身分行為の追跡が可能なシステムをとっています。
・オランダ;出生、婚姻、死亡の各登録簿の他に、人口登録カードがあり、個人別に出生、婚姻、死亡などの身分事項を継続的に記載しており、個人についての身分行為の追跡が可能です。 またこのカードには、父母、配偶者、子が記載されるので、家族関係を知ることも可能です。
・スウェーデン;出生、婚姻、死亡、転居などの登録はすべて教会の管轄する教区登録所が行っています。行政は、出生の時点で国民に番号をふり、個人の身分行為を順次登録するシステムを導入しています。 これを個人票といいますが、父母、配偶者、子供も記入されますから、家族関係を追跡することも可能です。
多少の正確性を度外視すると、以下のようにまとめられます。
家族簿などの登録制度 個人を特定するもの
アメリカ 無し(州・または群管理) 社会保障番号
イギリス 3か月ごと
ドイツ 家族簿
スイス 家族登録簿・本籍
フランス 登録簿
オランダ 登録簿・人口登録カード
スェーデン 教区登録所
「海外には戸籍はない」というのは正確ではなく、家族関係を追跡できる制度はアメリカを除き、ヨーロッパの各国には、それぞれの制度があることがわかります。
様々な行政手続きのIT化が世界で最も進んでいるという「エストニア」についても、少し深堀りしていきたいと思います。