入管法改正案見送りに思う
昨日、国会で審議中だった、入管法改正案が見送りとなったとの報道がありました。このような与野党が対立している話題について言及すると後日思わぬ展開になることがあるので避けておきたいところですが、自分の記録のために、一言、残しておきます。
入管難民法は外国人の収容や送還のルールについても触れています。その部分が今回の主な改正点でした。簡単に言えば、不法滞在や日本滞在中に犯罪を犯して本国への送還が決まったケースでも、本人が自分は本国へ帰ることができない難民であるとの難民認定の申請をすれば、その申請中は送還されないというきまりがあります。収容所に滞在することができます。いったん、難民申請が認められなかった場合でも繰り返し申請することによって、いつまでも申請中の状態をつくることができます。申請回数についての規定がないからです。そこに回数の上限を設けようというのが今回の改正点だと以前に報道されておりました。
実際、最近のデータがあります。退去処分に応じて出国する人は年間約1万人に対して、本人が拒否したり本国が強制送還に応じない外国人は約3千人にのぼるとのこと。問題は、さらに、このうち、約2400人が病気などの理由で収容施設から「仮放免」されています。単純に滞在期間がすぎて不法滞在している人のほかに、懲役3年以上の実刑判決を受けた人が約1割、約3百人含まれています。実際、仮放免されたあと、再度、犯罪を犯すケースも相当数に上ると報道されています。
この点をなんとか改正すべく、与野党がほぼ合意に達していたタイミングで、ちょうど、収容中の処遇に関わる事件が起きました。名古屋の出入国在留管理局の施設に収容中のスリランカ人の女性が死亡し、遺族が収容中の映像を公開するように求めていた件が紛糾しました。映像を開示できないことについて「保安上の理由」と答弁されていますが、なっとくのいくものではなかったようです。
ともかく、与野党がこの問題で対立を蒸し返し、いきつく先は廃案で、収容施設を管理している法務大臣の不信任決議案も提出されない結末となりました。
いくつかの問題はなにも進展していません。今回のような改正は、今後、日本社会で働く若手労働者の不足が問題視され、外国人技能実習生に加えて、特定技能の資格を持った多数の外国人がざまざまな業種で働くことになる近い将来を見据えて、検討されたいきさつがあったものです。日本で生活することになる大勢の外国人との良き共生社会とは、という観点です。
もっとも、ここ1年は新型コロナの影響で、想定したような規模で外国人が就労することはなかったので、廃案にして次の国会で新たに法案を審議しても間に合わないことはないものですが、今回のようなすっきりしない幕切れにならないことを願っています。
(関東も梅雨入りしたのか、すっきりしない天気が続いています。喜んでいるのはアジサイはじめ多くの草花かと思われます)