不動産業が中古住宅の流通を妨げているという考え

世の中、大量に空き家が増えています。
2019年4月に公表された最新のデータ(2018年の調査)によると、全国の空き家数は846万件でした。(総務省統計局平成30年住宅・土地統計調査)
全国の家に占める率で見ると空き家率は13.6%と過去最高の数字です。7軒に1軒は空き家となっています。

ひとつ前の平成26年の調査で、無作為に抽出した戸建て空き家等を対象に、空き家になる背景を分析しています。

・人が住まなくなってから5年以上経過しているものは36.4%

・建築時期は1980年(昭和55年)以前(旧耐震基準時代)のものが62.3%

・所有者の年齢は高齢者(65歳以上)が55.6%

・取得した経緯は「相続」が最も多く、52.3%

・空き家にしておく理由のうち「解体費用をかけたくない」が39.9%

相続、高齢者、解体にもお金がかかる、という納得できる結果になっています。

増え続けるのは、どうしようもないのかと思っていろいろ調べているうちに、「空き家幸福論」という本に出会いました。マスコミでも取り上げられたことがあるということなので、ご存知の方もおられるかもしれません。「家いちば」というサイトを運営している方です。

ネット社会だからできる手法だと思いますが、中古物件をリフォームなどの手をかけずに、あるままの状態で、売り手と買い手をマッチングさせるサイトです。

常識的には、中古住宅を売るには中の荷物を撤去し内装をきれいにするか、あるいは解体して更地にするか、という常識的な選択になりますが、あえて、そのような手をかけずに扱うケースもあるようです。

本で紹介されているケースでは、亡くなったお父様が釣りが趣味で、家のなかにたくさんの釣り道具が残っているような物件。それを廃棄するのではなく、丸ごと、同趣味の人に引き取ってもらうというようなやり方です。それを仲介者はなるべく間に立たずに、実物を見せて、売り手と買い手が直接、物件の良いところ、悪いところを話し合っていただくというやり方です。

本に記載の一例を紹介すると、「ピアノの音はきこえますか」という買い手の質問。これが、仲介をする場合、答えるのがたいへん難しいといいます。「聞こえる」といえば売れなくなる、「聞こえない」と答えてしまえば後でクレームになる恐れがあるという点です。「音の問題は個人差がありまして・・・」という無難な説明は実は解決になっていません。遮音等級のウンチクを出したりしても同じことです。

この事例で売り主さんの回答は明確で、まず、「はい、聞こえますよ」ということです。「でも、注意したら静かになりました」ということで買い手が納得したということです。ご近所との関係やピアノを弾く時間などに気を配れば解決可能な問題とさらりと体験を話してくれたということです。仲介者にはなかなかできなポイントだと思います。

駅前の不動産屋であれば訪問客は限られていますので、特定の趣味を持っていた人の家を、これまた特定の理由で物件を見つけたいというような、ごくまれなめぐりあわせは商売にならないものだと思います。

このサイトを実際にみてみましたが、通常は、「価格」や「広さ」などでソートできるようになっているのが当たり前ですが、あえてそうなっておらず、じっくり売り主さんの思いを読みたくなるようなものになっています。

どのくらいこの手法が広がるかはわかりませんが、たいへん面白い取り組みだと感じました。

(いらすとやさんからピアノ演奏のイラストをいただきました)