デジタル化の先の「仕業」について
デジタル庁創設を柱とする政府のデジタル改革関連5法案が、3月9日、衆議院での審議に入りました。これまで各行政組織で独立していた許認可申請などの様々な手続きが、行政のデジタル化によって大幅に簡素化されていくものと思われます。先日の入管手続きに関して企業だけではなく、個人が期間更新や変更の手続きをスマホから行うことができるようにする、という報道もその一環です。
デジタル庁ができても移行にはしばらく時間がかかるものと思われますが、徐々に、「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)及び権利義務・事実証明に関する書類に関して、法律に基づき作成、作成・提出を代理または代行」する行政書士の業務は減少していくものと思われます。
この「 」の文言は、行政書士法からの抜粋ですが、移行期には、( )に示されている(電磁的記録を含む)という部分、すなわち、不慣れな一般の申請者の依頼を受けて、スマホやパソコンからデジタル申請の代行を行うという業務が続く可能性があります。それが、あくまで「つなぎ」の時期になるのか、あるいは、中長期的にも、デジタル機器に縁遠い多数の方の良きサポーターとしてお仕事をいただけるようになるのか、それはひとえに機械の進化ではなく、手続きがどこまで単純に簡素なものになるかということに依存するものと思われます。
現在、紙の申請用紙に必要事項を記入するものが、そっくりそのまま、デジタル機器での入力に移行するのであれば、紙の上で全体を一望してチェックできることと比べて、入力時に画面で見える範囲は限定されますので、たいへんな不自由を感じざるを得ません。たとえていえば、ドラクエなどのロールプレイング・ゲームで迷路にはまったような具合です。何度も同じ道をたどり、現在、どこにいるのか見通せるプロであれば、そのような不安なく依頼者をゴールまで導くことができます。
それが、高速道路のように、障害物が少ない道筋に変化を遂げたとき、すなわち、余計な枝葉の注意書きがばっさり消えて、あるいは途中で提出しなければならない、どこかの官庁に提出済の書類のコピーを持参しなければならない必要性が一切なくなり、入口に立てばゴールが見通せるようになれば、ガイド役も不要になるものと思われます。
そのような方向に向かうことを願っています。
行政書士法の条文は、「加えて、当該書類作成に伴う相談に応ずることを業とする」と続きます。ここに活路があるという説がありますが、この件は、別の機会で詳細にみていきたいと思います。
(素敵なイラスト、いらすとやさんからいただきました)