行政のDXについて(6)

毎日報道される新型コロナの新規患者が少し減少傾向にあるようです。ここで緊急事態を打ち切る、あるいは、20時以降の飲食業の規制を緩和するなどの判断は、市民の健康維持という観点とは少し離れた、きわめて政治的な判断になります。

中国では、数名の感染者が新たにみつかると、そのエリア一帯、何千人もの人のPCR検査を実施し、すぐに、立ち入り禁止区域を設けると聞いています。それと比べると我が国の措置はたいへん悠長に感じますが、個人の自由の制限に対する考え方の差異かと思います。

来年の冬には北京で冬季オリンピックが予定されています。ここまで徹底的に対策をすれば、たぶん、開催にこぎつけることができるような気がします。東京はごたごたしていますので、たいへんあやしくなってきましたが。

さて、「行政のDX」(デジタルトランスフォーメーション)ですが、本日は、中国の事例をみていきたいと思います。

少し前にEUの「デジタル・ガバメント施策」について触れました。簡単に書けば、多国間の競争と協調をベースに展開されているというものです。では、中国はどうかといえば、単独で1国で強力にデジタル化を推し進めているようです。

「第46回中国インターネット発展状況統計報告」というものが公表され、いくつかの日本語訳や解説がwebにアップされています。そのなかから、要点をピックアップしていきます。

・中国ではモバイルを通じたインターネット網が都市部を中心に広く浸透

・中国のインターネット利用者数は2020年6月時点で9億4,000万人、インターネット普及率は67.0%、そのうちスマートフォンなどのモバイル端末によるネット利用者は9億3,200万人と、インターネット利用者全体の実に99.2%を占めている

・したがって、人々は毎日スマートフォンを通じて何かしらのサービスを享受している

・特に、QRコードを活用したキャッシュレスは、大きな店舗から小さな露店まであらゆる決済場所に浸透しており、老若男女がQRコード決済を生活習慣として利用している

・このような背景から、中国では行政サービスのスマホアプリが「アリババ」等の民間企業のプラットフォーム上に数多く作られており、例えば駐車違反の罰金をアリペイで支払うなどといったことが可能になっている

ハード面では、このように進んでいることと、もうひとつ、デジタル化を推し進めるうえで重要な点は、個人の所得情報やキャリアなど社会的ステータスに関するデータを政府が一元管理し、その内容や履歴に基づいて全国民をランキング化し、オンライン・オフライン両面でのあらゆる行動に対して「ソーシャルクレジット」という偏差値でスコアリングをすることが当たり前になっているということです。

私が以前かかわったことがある中国のIT関係の会社では、毎週、従業員の成績を貼り出し、それに応じて給与に格差を設けていました。そうしなければ、他人より優れた成果を出した人からクレームが来ると管理者が説明していました。

そういう社会と日本は正反対です。今はもう見られなくなったと思いますが、小学校では差異を設けない授業の一環で、運動会の徒競走のときに、全員で手をつないでゴールし、順位をつけないということがありました。大きな違いがあります。

「デジタル化」という側面だけをとらえると、政府がデータを一元管理することが当たり前になっている中国方式のほうが断然、ものごとを進めやすくすることができるものと思いますが、さて、今年の秋にスタートする我が国の「デジタル庁」は、どこまで、いろいろな垣根を取り払って一元管理を目指すのか、注目していきたいと思います。

(かわいいイラスト、いらすとやさんからいただきました)