行政のデジタル化のためのアナログなこと
デジタル庁がトップダウンでいろいろな改革を進めるにあたり、民間からもデジタル分野に明るい専門家を検討チームに加えるという報道があります。必要なことだと思いますが、なんでも書類をパソコンに置き換えれば片付くということでもないので、専門家のなかには、デジタル分野に明るくない人が困らないためには何をどうしたら良いのかという側面にも気配りができる方が含まれていることを期待したいと思います。
さて、デジタル化と一言で呼ばれていますが、今まで行ってきた仕組みをどういう方向で見直していくのかという行政改革だと理解しています。相当の労力をかけて、それぞれの自治体が考えていく必要があります。そのために、先行する自治体に様々な実証を行わせて、その経験を水平展開するという試みが行われています。
本日は、そのなかから、岐阜県高山市の「おくやみ窓口」システムについて。
「おくやみ窓口」とは、住民が死亡した際に遺族が行う行政手続について、窓口をひとつにまとめたということです。死去に伴って行う手続きについては、戸籍にまつわるもののほかに、各種の登録済の内容の削除や変更があり、市役所のなかだけでも、25の部署にまたがるといいます。
高山市では、市民の死亡届が提出されたタイミングで、遺族にとって必要となる手続を関係部署に回答させることで集約し、市役所訪問時にワンストップでの手続を可能とするシステムの構築を目指すことにしたというものです。
つまり、いちいち、申請する側が調べるまでもなく、市役所のなかでAさんが死亡したとわかれば、どこにどんな登録がなされているのか、市側が調べればわかるはずです。なにしろ、遺族にとっても本人しか知らない手続きなどがあったりしますので、このような対応は、たいへん助かると思います。
これまでの行政手続きは、申請する側が、1件ごとに紙に申請したい内容を書いて提出し、それを根拠に、1件ずつ処理がなされる仕組みでしたが、高山市の「おくやみ窓口」の試みは、やるべきことを役所の側が探し出すということで、今までとは根本的に異なる取り組みのように思います。
「行政手続きのデジタル化」とは、既存の書類をデジタルなデータに置き換えるだけでは進まない、今回の事例では、それぞれの現場の業務を熟知している担当者が先回りして調べ上げるというようなアナログな一工夫が必要なのではないかと思った次第です。
(「写真AC」のmomo105さんからいただいた写真です)