二重国籍問題②

昨日、二重国籍問題でテニスの大坂なおみ選手のことに触れようと考えていた矢先、この方の行動が大きなニュースになり、偶然性に驚いています。そういうことってありますよね。

日刊スポーツから「2度の4大大会優勝を誇る世界10位の大坂なおみ(22=日清食品)が、23日に米ウィスコンシン州で起きた警官の黒人男性銃撃事件に抗議し、27日に予定されていた準決勝の同22位エリーズ・メルテンス(ベルギー)戦を棄権した」との報道です。

以前からも頻発している黒人に対する警察官の対応が、また大きく変化するきっかけになることと思います。

彼女も、アメリカと日本の二重国籍ですが、たぶん、このままでいくのではないかと思われます。では、「日本は二重国籍を認めない国ではないか」ということに関しては、いろいろ誤解もあるようです。おいおい、それについても解説していきたいと思います。

国籍に対する考え方は、それぞれの国に歴史があって、世の中の流れはこうなっている、と断定するのは正しくないと思います。

まず、「国際結婚の子供など、未成年のうちに複数の国籍を持つケース」についても、1種類の考え方ではないこと。

大きく分けると、出生した子の国籍取得の形式には、「血統主義」と「出生地主義」があるということです。

「血統主義」とは、親が自国民であれば子も自国民であるとする方式で、父親が自国民であることを要件とする場合は父系優先血統主義と、父母どちらかが自国民であれば子も自国民となる場合は父母両系血統主義といいます。日本、中華人民共和国、大韓民国、イタリア、ノルウェー、フィンランドなどの国々で採用されています。日本は、現在、父母両系血統主義に分類されます。また、原則として血統主義ですが、出生地主義を認める例外規定を設けている国にはイギリス、オーストラリア、オランダ、ドイツ、フランス、ロシアなどがあります。

「出生地主義」とは、自国の領域内で出生した子は、両親の国籍にかかわらず自国民であるとする方式です。かつてヨーロッパ諸国も血統主義が一般的でしたが、アメリカ独立、フランス革命を経て出生地主義が一部の国で採用されるようになりました。出生地主義の国は、アルゼンチン、カナダ、アメリカ合衆国、ブラジルなどです。比較的新しい国です。国を繁栄させるために、より多くに人が自国に根付いてもらいたい、というような考えがあるように思えます。

さて、アメリカですが、国籍に関しては包容力があって、なんでも許容してくれそうですが、調べましたら、「アメリカ合衆国では、多重国籍者の存在を認めてはいるものの、積極的には容認していない。アメリカ合衆国国務省も、多重国籍は租税回避やテロリズムへの対策のために推奨しないと公表している。出生時に自動的に他国の国籍を得た場合はアメリカ国籍に影響を与えないが、アメリカ人は米国籍を放棄する意志を持ってアメリカ以外の国籍を得た場合は、米国移民国籍法によってアメリカ国籍を失う可能性がある」ということでした。当然といえば当然です。

本日の最後は、ふたたび、大坂なおみ選手ですが、本来、日本の場合、22歳までにどちらの国籍を選択するか決める必要があるのですが、

「期限内に日本の国籍を選択しなかったときには,法務大臣は,国籍の選択をすべきことを催告することができるとされており,催告を受けた日から1か月以内に日本の国籍の選択をしなければ,原則としてその期間が経過した時に日本の国籍を失う」ということが法務省のHPに書かれています。

つまり、法務大臣が勧告を「することができる」ということは、しないままでもかまわないということです。決めるのは本人しだいです。

スポーツに限らず立派な行動を起こす、この方に対しては、ぜひ、日本国籍を放棄しないでいただきたいと切に願います。

(写真は、TANEJIROさんによる「写真AC」からいただきました)