自筆証書遺言保管制度のトライアル③
自分で書いた遺言を法務局が保管してくれる制度が、今年の7月10日から始まっています。死後、相続が開始されたときに、遺産分割をめぐって親族が争いごとを起こさないためにも遺言書を作成しておくという風習が普及するのはよいことだと思います。
以前、一度、無料相談会のお手伝いをした際に、よく言われたのは、「我が家は、もめるような財産はないので要らないよ」ということでした。そういうケースは多いのかもしれませんが、簡単に手続きができるのであれば、家や土地の権利関係も含めて財産と呼べるものを整理し、どのように相続させたいかを記録に残して置くことによって、ご家族の安心も得られることと思います。
さて、できたばかりの制度にさっそくトライすべく、インターネットで申し込んでいたのが、いよいよ本日の午後となりました。すでに、A4紙1枚と目録1枚(ほんとうは、1枚に収まるのですが、複数枚あった場合の面倒の具合を確認するために、あえて、2枚にしました)、自分で手書きした、初版、白川正広の遺言書というものです。
窓口の手続き関係の感想は、ただしく保管が完了してから、明日以降に書かせていただきます。本日は、それに添付する「申請書」に関して。
そもそも、法務局では持参した遺言書をスキャナーで読み取り、数十年保管してくれるシステムになっていますが、誰がいつ作成したものか、死後、誰に通知したいか、という点を識別する目的で、5枚ものの申請書を作成する必要があります。
特に、土地や不動産の登記内容を記入するような複雑なものではなく、現住所や本籍、生年月日などを記入する程度のものです。相続人に関しても同様です。しかも、特段、戸籍謄本などのエビデンスを求められるものではなく、普通にマスを埋めて作成できる程度のものです。
しいて言えば、高齢で少し認知症が始まっている人、あるいは、身体能力が衰えてペンを持って字を書くのが手先が震えてしまって手書きするのが容易でない人などは、少し難しいかもしれません。そういう方々がどうしても遺言書を作成したいということであれば、やはり、公証役場で「公正証書遺言」というものを作成することをお勧めすべきだと思います。
たいした内容のない「申請書」ではありますが、この記入手続き代行を行政書士が行うとすると、法的に問題が生じます。行政書士が作成して提出できる官公署のなかに、裁判所や法務局は入っていないからです。この領域は司法書士の業務範囲となっています。住民票記載の内容を転記する程度の申請書なので、めくじらを立てようと思うわけではありませんが、あえて一言言わせてもらえば、このような「申請書」は無くすることができるのではないかという私見です。
携帯電話の契約をすることを思い起しましょう。同じように、住所や生年月日を申告する場面があります。最近であれば、運転免許証にICチップが埋めれれていますので、それをドコモやauやソフトバンクの窓口の担当者は、ハンディな読み取り装置にかざして必要な内容をタブレット端末に転送します。マイナンバーカードでも同様のことができるはずです。(現時点では、そういうことが簡単にできないような「ファイヤー・ウォール」が邪魔していることが、このマイナンバーカードシステムの問題ではありますが)
ですので、法務局が知りたい内容は、タブレット端末から選択肢をチョイスすれば仕上がる程度のものであって、この「デジタル」な時代には、わざわざ、前時代的な5枚ものの「申請書」を設けなくても済むのになあと強く感じました。
(申請書の頭の部分です。スキャンして保存するため、筆記体や草書体にならないように、マス目に1文字ずつ記入させる様式になっています)