コロナに負けない;控えめに先のことを考える(教育について)

昨日は、たいへん良い天気ながら、行楽にでかけることができない、外出自粛のなかの連休でした。それぞれの方が同じ思いかと思いますが、新型コロナウィルスの感染拡大がおさまり平常な生活に戻ることを祈っております。

考えたいのは、「元の状態に戻る」ことができるのか、あるいは、単純に、「元の状態に戻るべきなのか?」という点で、話題に上りつつあるのは、教育の問題です。

緊急事態宣言が出される前に、2月の時点で全国の小中学校を一斉休校にするという方針が政府から出されました。本来、4月から新学期ですが、小学生が長く自宅に留まっている期間が長くなっています。

当初の緊急事態宣言の期間、外出自粛や学校の休校要請は、5月6日まで、すなわち、GW期間の終了までとされてきましたが、感染者数の増加は、ややおさまってきているという報道があるものの、どうも、この連休までで打ち切るということにはならないのではないかという見通しがあるため、小中高校生が登校できない期間が長期化することに対して、夏休みを短縮することも含め、いろいろな案が検討されることになるものと思います。

そのような案の一つとして、この際、入学を4月から、欧米の諸外国とあわせて9月からに変更したらどうか、という議論があります。

「そんな極端な案は、コロナが納まってからじっくり検討すべきだ」というご意見もあろうかと思います。しかし、大きな制度の変更は、切羽詰まった時に断行できるという側面も持っています。

そもそも、入学を9月に移動することに伴うメリットはいろいろあるようです。
◆現状、ITツールを使って遠隔で授業をさせることができる私学などの学校と、それができない学校との間の格差を解消することができる。

◆最も大きなメリットは、主に大学ですが、欧米の諸外国とあわせて9月からに変更することによって、海外への留学あるいは、外国からの優秀な人材の受け入れが容易になる。

◆大学入試も、現状の1月~3月の時期は、毎年、インフルエンザが蔓延する時期でもあり、首都圏でも大雪が降って交通が乱れたり、必ずしも最適な時期ではない。入学試験を6月~7月頃にシフトできれば、来年以降のインフルエンザ+新型コロナの感染影響も緩和できるのではないか。

ということがあります。小中高校は学校教育法施行規則の改正によってずらすことが可能で、法改正の手続きは難しくない、というようなことも今回知りました。

「しかし、明治以降、一貫して、我が国は4月入学ではないか」
私もそう理解してきましたが、新聞記事によれば、そうではないようです。

◆明治のはじめは欧米の教育制度を導入したので、9月入学が主流だった。

◆明治19年に徴兵令が改正され、徴兵対象者(満20歳の男子)の届出日が9月1日から4月1日に変更になった。それを受けて、高等師範学校が4月入学に切り替えた。手をこまねいていれば優秀な人材が陸軍にとられてしまうという考えがあったようです。

◆旧制中学校、小学校が順次、それに続き、4月入学に切り替わっていく。ただし、帝国大学を含め日本の大学が完全に4月入学になったのは大正10年。

今、このような悠長な、それぞれの学校がばらばらに、入学時期をずらすのは社会的な大混乱を招くかもしれません。しかし、「昔から、日本は入学式は桜の咲く4月と決まっていた」ということはないということですので、この事実はもっと多くの人が知っておくべきだと思いました。

さらに、「9月入学」にすべきなのは、今年の小学校1年生と、大学1年生あたりから始めるのがいいのではないか、というのが私見です。スタート時期を合わせるのは、集合教育を始めて経験する小学校1年生からでいいのではないか、在校生は、やりくりがきくのではないか。
一方の、大学卒業と会社への採用の関係に関しても、在校生は現行の制度とすることによって、新1年制が卒業する「4年後」を考えれば済むので、うまい解決策があるのではないか、例えば、卒業が夏になりますので、それまでに採用内定を出して、半年間、実務研修かあるいは社会実習やボランティアをさせるなど、入社前の半年間は、たいへん有意義に活用できるような気がします。

新型コロナウィルスの影響で、社会活動が相当程度、停滞しているこの時期こそ、理想的な制度はどうあるべきかを議論し、日本人にありがちな、「全学年一斉に」とか、会社の入社式もセットで、というようなすべて「耳をそろえてた条件」を設けて、徒にハードルを高くすることなく、ゆっくり変革させていく、というようなことも、アリではないかと思います。

もちろん、これは、単なる私のアイデアで、教育を預かる先生方は、1年生とそれ以上の学年で学期がちぐはぐになることは、並大抵な苦労では済まないのかもしれません。

しかし、明治から大正にかけて、9月から4月入学に全国の学校がそろったのに、明治の後半25年間と大正の10年の合計35年もかかったことを思えば、十分、検討の余地があるものと思います。

テレビやマスコミは、あれこれ議論しても、簡単には解決が難しい「新型コロナウィルス対策」の是非を議論するより、少し先をみて、この経験をこれからの社会にどう生かすかという話題を提供して、落ち着いた議論をするほうが建設的のような気がします。

ステイホーム、こういう時期こそ、冷静に。

(写真は、かっちゃんさんによる「写真AC」からいただきました)