コロナに負けない;入管関係について

新型コロナウィルスの影響は全世界に広がっており、様々な国への渡航制限が出ています。図は時事ドットコムからいただいた、現時点で直行便が運航している国です。相当、制限されています。

また、我が国も現時点ではほとんどの国に対して、新規ばかりではなく、外国人の再入国に関しても「入管法の第5条第1項第14号に該当する外国人として、特段の事情がない限り,上陸を拒否する」としています。

◆出入国管理及び難民認定法;第5条第1項第14号
「法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」

ここで留意すべき点は、「特段の事情がない限り」の部分です。
「4月2日までに再入国の許可により出国した『永住者』,『日本人の配偶者等』,『永住者の配偶者等』又は『定住者』の在留資格を有する外国人が再入国する場合は,原則として,特段の事情があるものとします」としています。つまり、身分系の在留資格の者は、4月2日以前にみなし再入国を含め許可を得て出国した場合は再入国できるとされています。

一方、4月3日以降の出国に関しては、上記の「特段の事情」を適用しないことになっています。新型コロナウィルスの感染拡大の進展に応じて対応が変化していますので、注意が必要です。

もうひとつ、注意すべき点として、「特別永住者の方については,入管法第5条第1項の審査の対象となりませんので,上記の各措置により上陸が拒否されることはありません」という断り書きがあります。

入管関係に明るい方にとっては常識の部類ですが、本日は、この「特別永住者」について整理しておきます。
「特別永住者」とは、一言でいえば、第二次世界大戦終結時にそれまで日本の植民地であった朝鮮、台湾出身者で日本に在住していた人が該当します。
歴史的に少し複雑な経緯がありますので、以下をピックアップしておきます。

・第二次世界大戦終結後、朝鮮半島は、ヤルタ協定によって連合国に分割占領され、後に大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国として独立。台湾は中華民国となった。
・日本国籍者で居続けるか、朝鮮籍・中華民国籍に戻るかの選択肢は、当事者に与えられなかった。
・日本国政府は、これら国籍離脱者の関係国への送還を、GHQや韓国政府などと調整していた経緯があるが、受け入れられなかった。
・1950年6月から1953年7月にかけては、朝鮮戦争が勃発し、全土が荒れ地となり、その時点で密航してきた者も含まれる。

その子孫も「特別永住者」に含まれ、2019年末時点での特別永住者の実数は、31万2501人であり、国籍別では「韓国・朝鮮」が約99%を占めています。居住地は大阪や東京近郊に集中しています。

「特別永住者」は本人又は父母がかつて日本国籍の保有者であったという歴史的経緯から、他の外国人と比べ、次のような特例処置を受けます。

◆特別永住者は、退去強制となる条件が他の外国人よりも限定される

◆再入国許可の要件の緩和

例えば、「通常の外国人には、上陸拒否事由に該当する場合は再入国許可が得られても上陸拒否されるが、特別永住者の場合は有効な旅券を有しているか否かのみが審査され、上陸拒否事由に該当したとしても再入国することができる」この規定が、今回のケースにも適用されることになります。

新型コロナウィルスの関係で、いろいろな手続きが関係することがあり、今起きていることに限らず、制度や規制ができあがった背景まで調べる必要があることがあります。
この機会に知見を広めていきたいと思います。