電子申請で先を行く特許申請から学ぶこと
特許などに関する「意匠法」に関して、明治以来の130年ぶりの大改正が行われ、この4月1日から施行されます。これまで「意匠権」として法律で保護され、独占できる対象は「物品(=有体物である動産)の形状や色彩など」に限られていたものが、無体物である「画像」、不動産である「建築物」、「内装」まで保護の対象が拡張されるということです。
背景には、近年の「IoT・AI」などの新技術の発展により、デザインの対象や役割が広がってきているということがあります。
このように、各種、官公署の手続きのうち、特許庁の関係は、インターネットの普及・進化に直結しているようで、先進的な取り組みがなされています。
手続きの内容の変化は上記のとおりですが、手続きの手段に関しても、特許に関しては、「電子申請」がかなり早くから実施されています。まだ、十分にインターネットが普及していなかった、平成2年(1990年)から「電子申請」の受付が始まっております。すでに、30年の経験があります。
当初は、インターネットで申請書を送付するには社会インフラが整っておりませんでしたので、申請の書類を「フロッピーディスィク」に収納して送付する、というようなことや、大手の事務所は特許庁と専用の回線を敷いて申請するというようなことから始まったようです。
さて、一方で、内閣府が音頭をとり「デジタル手続法」(情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律)が施行されようとしています。特許庁が平成の初頭からデジタル化に着手していたのに、その他の各省庁は、令和に入ってから、すなわち、約30年のギャップがあります。この時間差は、なにに由来するのでしょうか。
特許は申請書の形式もパターン化されており、また、これに係る弁理士もインターネットなどの分野に近い領域で業務を行っていたという実態があるのかと思います。
今は完全に特許の申請はインターネットを活用して行われるのが大半かと思われますが、制度がはじまった当初は、紙の申請も並行して存続していて、ただし、紙の申請の場合、役所でスキャナーに写し取ることに相当する代金を徴収されたと聞きました。一種のペナルティとも解釈できます。
他方、行政手続き全般に関しては、申請などの手続きは、弁護士や行政書士が行うものもありますが、圧倒的に一般の市民が役所に出向いて申請手続きをするという場面が多いという事情があるのかもしれません。先日、確定申告を行うために税務署に行ってきましたが、スマホから申請することをさかんに推奨しているように感じました。それほど、インターネットやスマホが大量に普及しているという時代になっています。便利な点は、長い行列に並んで待たなくてもよろしいこと、自宅にいて確定申告を行うことができる、という点です。
したがって、手続き自体も、特許申請の事例にあったように、紙で申請するものをスキャンして写し取り、デジタルモドキのものから始めるということではなく、必要最小限の項目を端末から直接入力する、というものに、ストレートに移行していくものと思われます。今後は、紙による申請も並行して、ということではなく、可能な手続きから順番に、デジタル手法でなければ申請を受け付けない、という具合に移行するものと思われます。
さらに、今回の「デジタル手続法」(令和元年12月施行)に期待したい点は、①「国の行政手続(申請及び申請に基づく処分通知)について、オンライン化実施を原則化」という点以上に、②「添付書類の省略ーー 行政機関間の情報連携等によって入手・参照できる情報に係る添付書類について、添付を不要とする規定を整備」という点です。令和2年度から省庁間の連携が開始されるとのことですが、例えば、「登記事項証明書」や「住民票の写しなどの本人確認書類」を添付していたような申請に関して、わざわざ、謄本を添えて申請する、という手続きが不要になることを目指しています。これを「ワンスオンリー」と呼ぶようですが、なかなかピンと来ない言葉です。用語の普及より内容が先行することを期待したいところです。
今の時点では、申請者ご本人からの委託をうけて「職務上請求書」によって、これらの「登記事項証明書」や「住民票の写しなどの本人確認書類」などの証明書類を取得することも行政書士の業務のひとつですが、いずれ、そのような手続きも不要になることを意味しています。いろいろな変化を前向きに受け止めていきたいと思います。
(写真は、himawariinさんによる「写真AC」からいただきました)