民法改正(いよいよ4月1日に施行される「債権法」);⑦様々なルール変更に経過措置があります

東京では桜の開花宣言が出されました。しかし、今年は新型コロナウィルスの影響で上野公園などでも花見は自粛する必要があったり、なんとも息苦しい状態が続きます。多くの国民の理解と協力で新たな感染者が爆発的に増加することが抑えられれば、緊急事態宣言などが出されることもなく、やがて平常に戻るものと思われます。あと2週間で、4月、新年度ですので、長引かないことを祈っております。

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さて、民法のなかで、主に契約に関係する、「第3編」債権法の改正が2020年4月1日に施行されます。

「この債権法については 1896 年(明治 29 年)に制定されてから約 120 年間にわたり実質的な見直しがほとんど行われていませんでした。今回の改正では,
①約120年間の社会経済の変化への対応を図るために実質的にルールを変更する改正と
②現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを法律の条文上も明確にし,読み取りやすくする改正を行っています」というのが改正の趣旨です。

「保証」、「損害賠償」、「賃貸借契約」、「売買,消費貸借,定型約款」などの契約関係のに関するルールの改正が行われます。

そのなかには、改正が施行された時点で新ルールにすみやかに移行されるものもありますが、例えば、施行日の前に契約を締結していた場合で、2020年4月1日をまたぐ場合、どちらの規定が適用されるのか、当事者間で認識が一致していなければ、社会に混乱を生ずることになりかねません。そのため、以下の4点の改正項目に、経過措置の規定が定まっています。

1.施行日より前に締結された契約に適用されるルール
2.施行日より前に発生した権利の消滅時効期間に関するルール
3.施行日より前に発生した権利に係る遅延損害金に関するルール
4.中間利息控除に関するルール

1.施行日より前に締結された契約に適用されるルール
原則として、施行日より前に締結された契約については改正前の民法が適用され、施行日後に締結された契約については改正後の新しい民法が適用されます。
【例外】定型約款に関するルール
定型約款については、施行日より前に契約が締結された場合であっても、原則として、施行日後は改正後の新しい民法が適用されます。

2.施行日より前に発生した権利の消滅時効期間に関するルール
「施行日前に債権が生じた場合」又は「施行日前に債権発生の原因である法律行為がされた場合」には、その債権の消滅時効期間については、原則として、改正前の民法が適用されます。
【例外】生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間に関するルール
生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間については、施行日の時点で改正前の民法による不法行為の消滅時効が完成していない場合には、改正後の新しい民法が適用されます。
・損害及び加害者を知った時点
2017年3月31日以前 ⇒ 時効が完成する時点は、知った時から3年(現行法)
2017年4月1日以降  ⇒ 時効が完成する時点は、知った時から5年(改正法)

3.施行日より前に発生した権利に係る遅延損害金に関するルール
施行日前に債務者が遅延の責任を負った場合の遅延損害金の額は、利率が約定されていない限り、改正前の民法における法定利率によって定められることになります。
・遅延の責任を負った時点
2020年3月31日以前 ⇒ 年5%(現行法)
2020年4月1日以降 ⇒ 遅延の責任を負った時点の法定利率(改正法)

4.中間利息控除に関するルール
施行日前に損害賠償請求権が発生した場合には、中間利息の控除に用いる法定利率については、改正前の民法が適用されます。
・損害賠償請求権の発生時点
2020年3月31日以前 ⇒ 年5%(現行法)
2020年4月1日以降 ⇒ 請求権発生時点の法定利率(改正法)

以上、7回にわたって、民法改正のうち「債権法」の改正部分をみてきました。大半のものは、これまでの判例を反映したものですのです。一部には、従来通りのやり方では違反行為になってしまうものもありますので注意が必要です。定着するにはしばらく時間が必要かと思います。

(写真は、紺色らいおんさんによる「写真AC」からいただきました)