新型コロナウィルスで「国境」を思う

子供の頃、外国でなにか事件や事故が起きると、それを報道するテレビのニュースで、

「なお、死傷者のなかに日本人はおりませんでした」

というフレーズに違和感を覚えたものです。なんと料簡が狭いんだ、日本人に死傷者がいなくても外国人が大勢死傷していると言ったばかりではないか、などと。

政府が行う対策も、海外に在住している日本人をどう守るか、ときに、災害からどう救出するかということに、まず照準が当てられます。最近になって、ようやく、そういうことなのだというこおとが理解できるようになってきました。それそれの政府は、それぞれの国民を守ることがその使命なのだという点です。

パスポートの冒頭にもその記載があります。

「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。 日本国外務大臣(公印)」と。

今回の新型コロナウィルスの件では、中国国内で昨日までに2万4千人もの患者が確認され、死者が490人に上ったと報道されています。武漢市からのチャーター便により日本人を帰国させたり、横浜港に寄港したクルーズ船の乗客を14日間上陸させない措置をとったり、こういう問題に直面すると「国境」を意識します。

この「武漢市からのチャーター便」の関係で、中国籍を持つ「日本人の配偶者」に関して、その「日本人の配偶者」は飛行機に搭乗することはできても、中国籍の方は乗ることができなかったと、報道されています。人道的には少し引っかかるものがあるものの、どこかで線を引く必要があるものなのだと再認識しました。

タイ25名、シンガポール24名に続き、日本19名の罹患者が出て、ヨーロッパでは、中国だけではなく、アジア全体を差別的に危険視するような動きがあるとのことです。

国民を守るということは大事なことだと押さえたうえで、将来、逆のケースもあり得ることを認識し、こういう時こそ、冷静に事態を見守りたいと思います。そして寒波が去り、温暖な春とともに、この災禍が収束することを願っております。

(写真は、はむぱんさんによる「写真AC」からいただきました)