就労ビザ関係;ドイツ、スウェーデンなどの事情
こういうデータがあります。それぞれの国において、外国人の就労者を「永住者」、「短期型」(労働、学生、難民)に分けて比較したものです。それぞれの国によって少しずつ定義が異なるので単純な比較はできない、と注釈はついておりますが、おおよその状況を比べることができます。
米国、ドイツなどでは「永住型」がダントツに多いことがわかります。日本の特徴は、「短期型(労働)」が多い点です。「技能実習」などがこれに含まれています。韓国も同様の傾向です。「短期型(労働)」だけで比較すると、ドイツ、フランス、カナダ、英国などを抜いています。
今後もこの傾向が維持されていくものと思われます、政府は、はっきりと米国やドイツのように、正面から「移民を受け入れる」という政策を示しているのではなく、労働力不足を期限付きの外国人労働者で補おうとしているからです。日本の社会全体で、まだまだ、外国人を当たり前に受け入れる環境が整っていないようにも思います。中長期的には日本在住の外国人就労者も「永住型」にシフトしていくのかどうか、それは今後の政策と社会環境の整備によるものと思われます。
スウェーデンをみてみると、就労者の数が少ないため、わかりにくいですが、この国は、少子高齢化がヨーロッパ各国のなかでも急速に進んでいる関係で、就労者絶対数に占める外国人就労者の割合が目立って大きくなっています。
日本総研から「ドイツ・スウェーデンの外国人政策から何を学ぶか 」(2019年7月4日)という論文が出されています。その内容から参考になるところをピックアップしていきます。
まず、ドイツのケースですが、外国人就労の条件として、「a)大学卒業相当の学位あるいは一定レベル以上の職業資格を有していること、b)賃金、雇用期間などの各種労働条件につき、ドイツ人労働者との均等待遇が保障されること、c)基礎的なレベルのドイツ語能力があること、の要件を全て満たし、ドイツ企業からの具体的な仕事のオファーがあれば就労が許可される。」となっています。これは、昨年から我が国で始まった「特定技能」の条件とほぼ一致しています。
さらに、「5年以上ドイツ国内で就業を継続すれば、無期限滞在が認められる。扶養に十分な収入のある仕事についているのであれば、家族を帯同することも認められている。」という制度になっています。我が国の場合は、まだ事例はありませんが、「特定技能1号」から「特定技能2号」にシフトすると、同様の条件を獲得できるようになります。
「かつてのドイツも「移民」へのアレルギーが強く、外国人労働者はあくまで一時滞在を建前とする制度を構築していた。しかし、2000 年代半ば、移民の受入れを正面から認め、制度整備を行って今日に至っている」という経緯があるとのことです。一朝一夕に「移民大国」になったわけではないということです。
さて、一方のスウェーデンです。基本的にはドイツと同様の枠組みですが、高齢化進展にともなう労働力不足が進行するなか、経営者サイドからの外国人労働者受入れへの要望が強まったことを受け、外国人の受入れを一挙に進めたようで、いろいろな社会問題を抱えるに至っています。「スウェーデンで極右政党が躍進し、移民排斥の声が高まった背景には、あまりにも急激に大量の移民・難民を受入れたことの影響が大きい」と言われています。日常生活を送るうえで、外国人との間でのトラブルが頻発していることが伺えます。特に、外国人が特定の地域に無秩序に偏在していることが背景にあります。
ドイツもそのような時期があったようですが、「経営者団体、労働組合、NPOなど、様々な民間レベルでの草の根の取り組みがあった。ドイツが大量の移民を受け入れているにもかかわらず、移民排斥運動が先鋭化するまでに至っていないのは、様々な民間レベルでの草の根の取り組みがあったから」ということを教訓にすべきだとこの論文は言っています。
我が国の少子高齢化は今後も加速していくことに歯止めがかからないでしょうから、中長期的には外国人に頼らざるを得ないと思います。時間をかけながら、うまく社会全体で外国人を受け入れるいろいろな取り組みや仕組みを作っていくことによって、国を分断するような事態を避けることができるものと考えます。