外国人材の受入れ・共生という重要なテーマについて
昨年(2019年、令和元年)12月20日に「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」が行われ、資料が公開されています。この閣僚会議の目的は「一定の専門性・技能を有する新たな外国人材の受入れ及び我が国で生活する外国人との共生社会の実現に向けた環境整備について、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって総合的な検討を行うため」とされています。人材不足を補うために外国人を積極的に受け入れる政策を推し進める上で、地域社会との共生が重要であるこ具体的に示されています。簡単にその要点をピックアップしてみます。
1.外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組
2.生活者としての外国人に対する支援
3.新たな在留管理体制の構築
この3本の柱に添った具体的な施策が検討されています。
1番目の項目は「特定技能外国人の大都市圏その他特定地域への集中防止策等、特定技能試験の円滑な実施」に関するもので、「介護分野におけるマッチングを行う地方公共団体への財政支援、建設分野の特定技能外国人受入事業実施法人における求人求職のあっせん等の実施、地方公共団体とハローワークの連携によるモデル事業の実施」などが挙げられています。
2番目の項目は、生活に関するもので、「一元的相談窓口に係る地方公共団体への支援拡大等(交付対象の全地方公共団体への拡大、複数の地方公共団体による広域連携の交付対象化、共生に資する日本人からの相談への対応等)」という全般に係るものから、
・やさしい日本語の活用に関するガイドラインの作成
・多言語自動音声翻訳技術に関するAI同時通訳の実現や対応言語の追加等に向けた取組
・災害情報の14か国語対応の推進、119番多言語対応
・運転免許取得等に係る多言語化の要請
・金融機関における外国人の口座開設円滑化のための環境整備
(14か国語のパンフレット作成・周知、外国人の在留期間の把握による口座の適切な管理等)
・外国人労働者の就労場面における日本語コミュニケーション能力の評価支援
・外国人児童生徒の就学機会の適切な確保等
・留学生の就職支援の強化(留学生や海外からのインターンシップの受入れの促進等)
・外国人労働者向け安全衛生教育教材の多言語化
というように、「言葉」に関する項目が目立ちますが、うまく生活できるような支援に目が向かれれています。
3番目の項目は、逆の視点で、「不正」に対する管理を強化しようとするものです。
・留学生の在籍管理が不適正な大学等に対する、留学生の受入れを認めない等の在留資格審査の厳格化
・技能実習生の失踪等の防止を目的とした取組の強化
・有効な送還方法等の在り方や法整備を含む措置の検討
といった内容です。
ヨーロッパのいくつかの国では、外国人排斥の運動が起こっていることが報道されていますが、その背景には、外国人が無秩序に偏在することで「セグリゲーション(居住分離)」の問題がからんでいる、すなわち、社会に溶け込まない異質な外国人の集落が生まれることによるトラブルが引き金になっているようです。
今回の政策はそういった海外の先行事例を踏まえたものと思われます。直接、入管手続きの変更に関係してきそうな項目は「3.新たな在留管理体制の構築」ですが、規制を強化する本来の狙いは、「外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進」という点にあることをよく理解しておくことが必要と感じました。