技能実習+特定技能で外国人がさらに増えることに伴う地域社会のそなえ

労働力不足を補うために、飲食業や建設現場などで外国人労働者を見かけるのが普通の光景になってきました。
「技能実習」の制度は、1993年(平成5年)に導入され、「技能実習」や「研修」の在留資格で日本に在留する外国人が、報酬を伴う技能実習、或いは研修を行う制度です。「出入国管理及び難民認定法」(「入管法」。)とその省令を根拠法令として実施されてきましたが、2016年11月28日、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が公布され、2017年11月1日に施行されました。また、留学生は本来、勉学が目的で訪日しているわけですが、働くために必要な「資格外活動許可」を地方入国管理局に申請して許可されれば、その旨、在留資格カードに記載されます。ここまでの外国人労働者が、2018年(平成30年)末の時点で、それぞれ、約33万人です。

これに対して、新たな外国人材の受入れとして、昨年(2019年)から開始されたのが「特定技能」の制度です。
「我が国の経済社会の活性化に資する専門的・技術的分野の外国人については,積極的に受け入れていく必要があり,引き続き,在留資格の決定に係る運用の明確化や手続負担の軽減により,円滑な受入れを図っていく。(法務省;出入国在留管理基本計画)」という方針に基づくものです。在留期間:1年,6か月又は4か月ごとの更新,通算で上限5年までとされています。
このうち「特定技能1号」は、介護,ビルクリーニング,素形材産業,産業機械製造業,電気・電子情報関連産業,建設,造船・舶用工業,自動車整備,航空,宿泊,農業,漁業,飲食料品製造業,外食業14の業種に限られていますが、5年間で、34万人を見込んでいます。昨年末までの実績は、なかなか計画通りの数字に達していないようですが、時間の問題で、現場のニーズがなくならない限り、やがてはこの在留資格の外国人労働者も30万人以上になるものと思われます。

始まったばかりの制度である「特定技能」の制度がうまく立ち上がっていかないことや、「技能実習」の制度にとってかわるものではなく両制度が併存することに伴う課題を指摘する報道もありますが、それは短期的視野のものかと思われます。いずれ外国人就労者は確実に増加することを認識しておく必要があります。

受け入れる側の日本人の側の「企業」ばかりではなく、「地域社会」が十分な準備ができているかということは一つの問題だと思います。そのような現象が一挙にどっと押し寄せるということになっていないのが幸いです。この点で、「地域での共存」ということが政府の資料に盛り込まれています。重要なポイントだと思います。それがうまくいかなければ、出身国ごとに、「〇〇国村」のような孤立した集落があちこちに生まれてしまうのではないかと懸念されます。社会福祉の観点からは、地域包括ケアのような仕組みのなかにすんなりと大勢の外国人も受け入れられるような制度にしていくことが必要と思います。仲良く暮らすということはどういう形態なのか、そのような発展形に行政書士の役割があるのか考えていきたいと思います。