少し入管関係;特定技能の課題について
現在の各業種の人材不足を補う目的で、2019年4月から新たな外国人材受け入れの制度として、「特定技能」がスタートしました。
2019年から2023年の5年間で、14の業種合計で34万5千人の外国人技能者を受け入れる計画で、初年度の2019年は約3万~5万人を予定しているものです。
すでに制度がある「技能実習」から経験を積んで、この「特定技能」に切り替える道も用意されていますが、基本は、相手国のなかで、日本語と業種別の技能試験に合格する必要があるという制度です。一定程度の日本語としっかりした技能を身につけた人を即戦力として活用しようという制度です。
政府は当面の受け入れを9カ国(ベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴル)からとしていますが、上記のような試験の仕組みはじめ、送り出し国の法令、手続きの整備が必要で、現時点では、カンボジア、インドネシア、ネパールの3カ国で制度がスタートしています。
そういった、初期の制度整備の影響からだと思われますが、初年度の2019年の予定数、約3万~5万人に対して、10月末時点で発表された実際にこの特定技能の資格で在留資格認定された人は、732人、目標の3%程度でたいへん少ないものとなっています。
この現実に対して、いろいろな新聞記事が出ています。
いろいろな課題があるようで、1件の手続きに申請書類が150ページも必要であったり、受け入れ後のケアのルールが細かく定められていて、それにかかる経費がけっこうな金額になるので、日本人と同等以上の賃金を支払うことが前提のこの制度なので、それに加えて受入れ後の経費を加算すると、中小企業にとっては受け入れたくても受け入れられないということが起きていると新聞記事などで言われています。
そうなのだと思いますが、人材不足は加速するでしょうし、それを補うには、1970年~198484年までに生まれ1990年台半ばから2000年前後に大学を卒業した「就職氷河期」に遭遇し、就労できずにいる世代の活用など、国内で対応できる手は打つとしても、やがり、どうしても外国人材に頼らざるを得ないものと思われます。
ですので、特定技能の制度は始まったばかりですので、この制度について評論するのは、今は避けたいと思います。予定した人数に到達していないことよりも、想定どおり外国人労働者が現状の技能実習生を上回る数、簡単に言えば、外国人就労者が5年間で倍増することに関して、日本社会の受入れ体制は大丈夫なのかということに注目したいと思います。
政府が示している「特定技能」の制度説明資料のなかに、10項目の支援計画が示されています。外国人を受け入れる企業に要請している項目ですが、このなかに、「⑧日本人との交流促進」という項目があります。やはり、そこにも目配りが必要ということは納得できるのですが、その例として示されているのは「自治会等の地域住民との交流の場や,地域のお祭りなどの行事の案内や,参加の補助等」というものです。
そういうことなのでしょうが、5年間などの一定期間だけ日本で働いたあとは母国に帰ることを前提にとらえているのか、「交流」という言葉が使われているとおり、あくまで、地域自治体の外の「お客様」の取り扱いを示しているものと思われます。
これも、就労の問題と同様、一朝一夕に片付くことではなく、ゆっくりと外国人の数が増大していくにつれて課題がもっと明確になり、解決していかねばならないことになるものと思われます。行政手続きの関連でいえば、「在留資格申請」のみにとどまらない、社会福祉との関係など、いろいろやるべきことがあるように思えます。
この点も今後、深掘りしていきます。
(このデータは、AERAに掲載されたものを引用させていただきました)