官営施設⇒官製民営;指定管理者制度⇒民営化で再生した事例
「指定管理者制度」で施設の運営を民間に委託していたところ、うまくいかなくなった施設がいくつか報道されています。そのひとつ『ゆうパークおごせ』が、さらに、民営に踏み切り、リニューアルにこぎつけた事例をみていきたいと思います。
「『ゆうパークおごせ』は、バブル経済で真っ只中の1995年に開業。約5万m2の広大な町有地に、温浴施設、キャンプ場、バーベキュー場を整備。30億円以上の事業費をかけて整備した林間の行楽地で、町外からも大勢の観光客を集めた。当初は第三セクター方式で越生町も出資する株式会社ゆうパークが運営。開業から5年間は、年間15万人の入館者を集めていたが、近隣に温泉施設が建設されると、温泉ではなく沸かし湯だったことも弱みとなって、その勢いを失っていった。」という経緯でした。
越生町では事業をあきらめ、施設の売却を決めたたものの、応募者が現れなかった、ということも経験しています。
そこで登場したのが「温泉道場」という会社です。
「温泉道場は、埼玉県内を中心に『おふろcafe』ブランドで温浴施設を展開している。風呂に飲食施設を併設し、コーヒーや雑誌・コミック、マッサージチェア、PCレンタルなどの無料サービスを提供するのが特徴だ。お風呂のあるカフェに行く感覚で、サードスペース的に1日ゆっくり過ごせる場をコンセプトにしている。2018年からはフランチャイズ店方式による全国展開にも乗り出している。」とのことです。
「数カ所視察したが、館内にテントやハンモックがあったり、何千冊もの本が置かれていたりと、これまでの温浴施設のイメージとは全く違っていた。越生の近隣には、埼玉医科大学、城西大学、女子栄養大学などがあり、若い世代をターゲットにすれば入館者は見込めるのではと思った」というのが、この会社の誘致を決めた町長の談話です。
さて、民間に売却ではないのに、民営化とは?
「温泉道場が開発の条件としたのが、20年の長期の賃貸借契約。町では、施設を条例で行政財産から普通財産に転換し、定期建物賃貸借契約を温泉道場と結んで、建物に付随する土地約5万1645m2は自由に使えるようにした。最初の3年間は賃借料ゼロで、4年目と5年目は年額250万円、以降は750万円を町に支払う内容」ということです。
温泉道場側もうまく立ち回ったようです。
「我々も自治体の制度を勉強して、実現可能なスキームを提案した。賃貸借契約など、町の弾力的な対応があって今回の事業は実現できた。町には情報発信や視察、イベントの協賛など協力してもらう事もあるが、過度に依存することなく、いい関係を維持できている。『町が協力しています』と言ってもらえるだけで、交渉や調達などスムーズに進む」
このような規模の契約変更は交渉に時間もかかるものでしょうが、なかなか楽しいビジネスのように思えます。