成年後見制度はなぜ機能していないのか;問題点が具体的に指摘されている
成年後見制度は「認知症その他の精神上の障害により判断能力が不十分な人のために、家庭裁判所によって選ばれた後見人が、本人の財産の管理や身上保護などを行うことで、その保護を図り、権利を擁護する制度」で、後見人は、本人を代理して法律行為を行ったり、また本人が締結した契約等を取り消したりすることで、本人の保護を図るもので、高齢化が進む日本社会のなかで、ますます必要になってくるものと思われます。
利用者数の推移をみると、図のとおり、20万人を超えたあたりで頭打ちになっているようです。制度の利用率という折れ線グラフの数値をみると、わずか、2.1%になっています。
この件について、「東京大学教育学研究科生涯学習論研究室+地域後見推進センター」が現状と問題点を具体的に以下のとおり指摘しています。
1.成年後見制度の利用者数の伸び悩み。(成年後見制度の利用が後見需要を十分に満たしているとは言い難いこと。) 2.近年、親族が後見人に選任されにくくなっていること。(専門職後見人が選任される割合の急増と親族後見人が選任される割合の急減。) 3.成年後見制度の利用件数全体に占める後見類型の割合の高さ。(本人の意思がより尊重されやすい補助や任意後見の利用率の低さ。) 4.市民後見人の普及と活用が十分とは言い難いこと。(市民後見人の選任数の少なさや関連機関の取り組みのあり方。) 5.市町村長申立ての大幅な増加と対応の必要性。(身寄りのない高齢者等の増加と各自治体における財源や人員などの制約。) 6.成年後見に対する各自治体の取り組みの温度差。(後見の申立件数や市町村長申立て件数の格差。) 7.根絶できない後見人による不祥事(不祥事発生への対応と抑制の難しさ。) 8.後見制度支援信託の利用の急増(本人の財産を本人のために使うことが難しくなっている状況。)
なかなか、単純ではないようで、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」というものが制定され、国・地方自治体が歩調を合わせて、抜本的に制度の見直しを行おうとしています。
つまり、国がひとつの法律を定めれば解決するという性質のものではなく、市区町村の日頃の取り組みや枠組みの整備を図る必要があるようです。一定の時間がかかるものと思われます。