日本列島縮小改革;「所有者不明土地問題」
日本列島のあちこちで抱える過疎化の問題について、国土交通省は「国土審議会」で本年度中に中間報告、来年度に最終報告をまとめ国会審議に持ち込む日程で審議が行われています。その一環として、今年、6月の会議で「所有者不明土地問題に関する対応について」と題する資料が配布され、方向性が示されています。 https://www.mlit.go.jp/common/001292378.pdf
この問題については「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が、すでに、平成30年6月6日成立、6月13日公布されています。
背景は次のような問題です。
・人口減少・高齢化の進展に伴う土地利用ニーズの低下や地方から都市等への人口移動を背景とした土地の所有意識の希薄化等により、所有者不明土地が全国的に増加している。 ・今後、相続機会が増加する中で、所有者不明土地も増加の一途をたどることが見込まれる。 ・公共事業の推進等の様々な場面において、所有者の特定等のため多大なコストを要し、円滑な事業実施への大きな支障となっている。
ここで「所有者不明土地問題」として、単に空き家になっている問題だけでなく、具体的に以下の点が指摘されています。 ①土地登記の所有者が「A氏ほか〇〇名」と変則的で用地取得の障害 ②相続が生じても、遺産分割や登記が行われず、所有者不明土地が多く発生 ③遠隔地居住の相続人が土地を管理することができず、環境悪化 ④所有者が一部不明な共有地は合意が得られず管理や処分が困難
このような問題が派生してしまった背景には、バブル景気の結果生じた「投機的取引」を抑制するために、平成元年に制定された現行の土地基本法が、現状にそぐわず障害にいなっているという問題がありました。
これから、いろいろ変わっていきます。利用・管理の促進策を打って人口減少社会に対応した土地政策を再構築しようとするものです。
1.所有者不明土地を円滑に利用する仕組み
反対する権利者がおらず、建築物がなく利用されていない所有者不明土地について
① 公共事業における収用手続の合理化・円滑化 (所有権の取得)
② 地域福利増進事業の創設 (利用権の設定)
2.所有者の探索を合理化する仕組み
登記簿、住民票、戸籍など所有者の探索時に容易に調査できるよう合理化の対応
3.所有者不明土地を適切に管理する仕組み
財産管理制度に係る民法の特例、具体的には、所有者不明土地の適切な管理のために地方公共団体の長が家庭裁判所に対し財産管理人の選任を請求可能にする制度を創設
このような施策によって、まずは、所有者不明土地を公共目的に有効活用していこうというものです。現状の民法に縛られ、相続の結果としての「共有者」が徒に増えて身動きとれなくなった土地が片付くことが期待されます。
さらに、注目すべきは、審議会で出された以下のような方策がどのように日の目をみるかです。 ①「相続登記の義務化」について登記手続きの簡略化や実効性を確保する方策 (司法書士の仕事が無くなる、変わる?) ②所有者不明土地の発生を抑制するため、土地所有権の放棄を認める制度を検討 (現在の法制度では、「この土地は要らない!」と宣言して手放すことはできません) ③権利関係の複雑化を防止するため、遺産分割に期間制度を設けることを検討 (徒に相続問題を裁判で争うケースが減るか?) ④所有者不明土地の対策として、不明共有者の共有関係の解消を検討 (真正直に共有者を増やさないような思い切った策を期待したい)
以下は、調査の円滑化・迅速化の措置です。