新たな入管資格
数日前の新聞に、こんなタイトルの記事がありました。
「外国人留学生の起業支援 政府、特区でビザ緩和へ」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49278060R00C19A9PE8000/
「政府は国家戦略特区内に限り、外国人留学生が保有する査証(ビザ)を起業ができる経営管理ビザに切り替えることができるようにする。外国人留学生の起業を後押しする狙い。地方の技術革新や産業振興、活性化につなげる。10月に召集予定の臨時国会に国家戦略特区法の改正案を提出し、早期成立を目指す」
「日本で外国人が起業する場合は経営管理ビザが必要になる。現在の制度では外国人留学生の場合、在学中に留学ビザを経営管理ビザに切り替えることができない」
「起業するためには、いったん卒業するか退学した上で母国に一時帰国してビザを取り直さなければならない。時間と費用がかかるため、留学生がいいアイデアを持っていても、日本国内で起業する意欲がなくなると指摘されていた」
優秀な留学生が日本の大学を卒業したあと、その専門性を生かし「技術・人文知識・国際業務」の資格で、日本の会社に就職する道はあったものの、いきなり、会社を興すというような道はありませんでした。
この図のとおり、制度改正によって、在学中から創業ができるようにしようという制度です。経営管理ビザは最長5年の在留期間が認められます。また、この「経営管理」を取得するには事業所や500万円以上の資本金の確保などが必要ですが、この条件はやはり必要ということです。
記事では、「国家戦略特区内に限り」とありますが、どのような地域に限定するのかということには触れられておりません。 ただし、「政府は6月にまとめた成長戦略のフォローアップやまち・ひと・しごと創生基本方針」の関係ということが示されています。
この「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」には、今読み返すと、確かに、このことについて触れられた部分がありました。
このシートの右下の最後の箇所です。 「留学生による我が国での起業の円滑化を図るべく、入国・在留管理等に係る制度・運用の見直し等を進め、本年度中に結論」とあります。
気になるのは、新聞記事で、この運用が「国家戦略特区内に限り」となっているところです。そういう目で「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」を読むと、「外国人の受入れ・多文化共生社会の実現に取り組む地方公共団体を支援」とあります。
つまり、全国一律ではなく、積極的に地域をあげて外国人の受入れや多文化共生社会の実現に取り組む地方公共団体には、制度を緩和して支援するということと理解しました。
「技能実習」の制度の弊害を除去するには、中間の人材仲介の悪徳ブローカーが入る余地をなくすることが重要で、農業・漁業に取り組む人材を確保するため、茨城県などは、県をあげてベトナムなどに視察団を出していると聞いています。
そのように前向きに取り組む地方とそれを望まない自治体を区別するということは、受入れ段階ではいい取り組みだと思います。
しかし、人はいろいろな都合で移住するものなので、この「国家戦略特区」の考え方がどういう制約条件になるのか、新たな制度の制定や運用に注目していきたいと思います。