勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし
本日から、中長期在留資格のある人やビジネス目的の往来に関しても、英国からの入国に制限を設けると発表されています。英国を中心に感染力が高い新型コロナウイルスの変異種が流行しているための措置です。
これまでの流れとして、新型コロナ対策と経済再生の両方をにらみ、いったんは規制してきた外国との往来を段階的に緩和する措置がとられてきました。今回もその姿勢に変わりはなく、「ビジネストラック」や「レジデンストラック」の緩和の措置、例えば、「入国後の2週間待機を条件に3カ月以上の中長期滞在者」を全世界から受け入れてきましたし、一部の国に対しては、新型コロナの陰性証明があれば、「入国後の2週間待機」も免除する方策が採られています。
今回の英国を対象とした変更について、外務省のホームページをみれば、簡単に、そのような緩和の措置の対象国についての注記として「英国を除く」としているだけです。
感染力が高い新型コロナウイルスの変異種が流行していて英国自体も対外的な往来を制限する措置をとっていますが、人が検査で気づく前に、英国以外の近隣国にも、きっとその「変異種」が一部は拡散しているものと推測されますので、「英国に限り」規制を強化するということでよいのかどうか気になるところです。
そういう判断の際に、きまって、科学的な根拠はどうなのかということが話題になります。ウィルスの変異種自体の感染力の強さがどうなのかということもそうですし、諸外国に拡散してそれが日本に持ち込まれるリスクを評価すべきではないかなど、「科学」に寄せられる期待は大きいものがあります。
しかし、いつもながら、科学者ははっきりっと「イエス/ノー」を言いません。なんともどかしいと思っておりましたが、科学とはそういうものなのだという論文がありました。
https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/contents/column0203.html
およそ科学というものは、プロセスが正しいかどうかが重要であって、ボタンを押せば安易に「正しい/間違い」の答えを出してくれる自動販売機ではない、という見解です。科学それ自体にも「不確実性」が内包されていることを忘れてはいけないという点です。
野球ファンの間で有名ということですが、故・野村克也監督の座右の銘が「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というものだそうです。目先の勝ち負けの結果論に拘ったまま方法論を疎かにすると、次のリスクに対応できないという視点です。
今回のように変異し続けることも含めて、正体がつかみにくい新型コロナウィルスであり、政策判断も医療崩壊を避けるために感染拡大防止に尽力することと、経済が窒息しないようにという配慮と、綱渡りのような判断が求められるなかにあって、科学者が言えることは、提供した情報のプロセスが正しいかどうかのみでしかないということを理解しておくことが重要だと感じました。科学者は政治の舵取りに関係するような「結論」を出してくれるものではない。リトマス試験紙のようなものはないのだと。
(公開されているスタジオジブリの「コクリコ坂」から画像をいただきましいた。本文とは関係ありません)