民法改正(いよいよ4月1日に施行される「債権法」);②改正の全体像
静かな、9年目の3月11日を迎えました。
東京オリンピックの聖火リレーが福島からスタートできるほど復興は進んでいるようですが、一方で、当初は2020年度末までとされていた「復興庁」がさらに10年間延長されることが国会に上程されています。
新型コロナウィルスの影響で大規模な追悼行事も中止や縮小を余儀なくされていますが、大規模災害があったことを忘れないとともに、隅々までの復興が成し遂げられることを願っております。
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さて、民法改正の続きです。たぶん、合計7回ほどになる見込みです。
民法のなかで、相続や親族ではなく、主に契約に関係する、「第3編」債権法の改正が2020年4月1日に施行されます。その概要をみてみます。
「この債権法については 1896 年(明治 29 年)に制定されてから約 120 年間にわたり実質的な見直しがほとんど行われていませんでした。今回の改正では,
①約120年間の社会経済の変化への対応を図るために実質的にルールを変更する改正と
②現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを法律の条文上も明確にし,読み取りやすくする改正を行っています」というのが改正の趣旨です。
まず、「①約120年間の社会経済の変化への対応」として、
1 保証人の保護に関する改正
少し、詳しい解説が必要ですので、ここでは要点のみとします。
(1)極度額の定めのない個人の根保証契約 は無効になります
(2)公証人による保証意思確認の手続が新設されます
2 約款(やっかん)「定型約款」を用いた取引に関する改正
「定型約款」とは、生命保険の契約書など、不特定多数の顧客を相手方として取引を行う事業者などがあらかじめ詳細な契約条項を「約款」として定めておき,この約款に基づいて契約を締結するものです。よく約款中に「当社都合で変更することがあります」と記載してあっても,一方的に変更ができなくなります。
3 法定利率に関する改正
今回の改正では,法定利率を年5%から年3%に引き下げています。また,将来的に法定利率が市中の金利動向と大きく離れたものになることを避けるため,市中の金利動向に合わせて法定利率が自動的に変動する仕組みを新たに導入しています。
4 消滅時効に関する改正
消滅時効とは、債権を一定期間取り立てないと消滅してしまう制度のことです。現状は原則 10 年ですが、例外的に、職業別のより短期の消滅時効期間(弁護士報酬は2年,医師の診療報酬は3年など)を設けていました。
今回の改正では,より合理的で分かりやすいものとするため,職業別の短期消滅時効の特例が廃止され、一律にを原則5年になります。
次に「民法のルールをより分かりやすいものとする」という点についてです。
1.意思能力に関するルール
高齢化社会に伴い、認知症の方が増えていますが、 交通事故や認知症などにより意思能力(判断能力)を有しない状態になった方がした法律行為(契約など)は無効であることは,判例で認められてましたが、それを条文に明記したものです。
2・賃貸借に関するルール
賃貸借契約では、敷金が使われますが、賃貸借の終了に際に借主がどのような範囲で原状回復するかについて紛争を避けるため基本的なルールを条文に明記しました。
次回以降、それぞれの詳細について解説していきたいと思います。