在留資格の虚偽の申請はアウト!
1月16日付の新聞の報道によると、京都で、外国人の在留資格を不正に取得するため虚偽の申請書を作って入管に提出したとして、行政書士及びネパール国籍の男女計3人が、入管難民法違反(虚偽申請)の疑いで、逮捕されるという事件がおきました。これから人材不足を補うために多くの外国人技能者を受け入れようという時に、たいへん残念なことです。
「虚偽申請」ということがどうして通ったのか、何が問題だったのか、みていきたいと思います。
そもそも、外国人の人材は、特定の用件があって日本に滞在しているというのが基本です。その目的に応じた申請を法務省の出入国在留管理庁を行い、認められれば、それに該当する在留カードが発行されます。
今回の場合は、「技術・人文知識・国際業務」という内容の申請がされました。大学や専門学校を出て特別な能力を持っている人に関するものですが、3つ目の「国際業務」とは、翻訳や通訳、外国特有の文化の紹介のような業務を指します。5年、3年、1年、3ヶ月のうちのいずれかが、状況に応じて決定されます。同じ業務で就労を希望する場合は、在留期間の更新申請を行います。このように、決まった目的があって日本に滞在している、という点が重要です。「京都市内の旅館で、広報やホームページの運営管理業務に従事している」という内容で更新が許可されました。
ところが、実態は、旅館で配膳や清掃など資格外の単純労働をさせていたということです。何が問題かといえば、この場合、外国人、例えば、ネパール人向けの旅館の広報やホームページの作成運営は、誰でもできるものではなく、一定の教育を受けたネパール人が対応するほうが、外国語を十分使いこなせない日本人を雇うよりも数段、効率的です。しかし、「旅館で配膳や清掃などの業務」に関しては、どうでしょう。特に、外国人だからできるとか、外国人にしかできないという種類のものではありません。比較的単純な作業ですので、誰でも、日本人でも十分できる内容です。たぶん、給料も安い、身体を使う作業で募集しても日本人は集まらないという背景があるものと思われます。
そこで、「旅館で配膳や清掃などの業務」という名目では、外国人の在留資格は通らないので、「広報やホームページの運営という外国人にしかできない仕事がある」という内容で申請し、「技術・人文知識・国際業務」という資格で申請してしまったということのようです。
これには、京都市の人材派遣会社が関与していて、他にもネパール人ら外国人約40人を複数の現場で不法就労させていたということがあわせて報道されています。それぞれの外国人の入国に際し、在留資格申請の取次を行政書士がやっていたということです。うっかり、人材派遣会社に騙されたという類のものではなく、旅館の現場の状況やからくりを知っていたうえでそれに加担したと思われ、これは、極めて悪質だと言わざるを得ません。
行政書士は、行政手続を専門とする法律家ですが、法律の裏をかく専門家ではあってはならないと思います。むしろ、ダメなものはダメと言えること、特に、外国人の問題に関しては、特定の企業の事業運営や利益の問題以上に、今後、日本社会がどうなっていくのかに直結しますので、同業として注意を払っていくべき問題だと考えます。