会社法の一部改正;時代に即したもので、よく理解しておきたい
民法がいろいろ改正されています。その一環で「会社法」の一部が改正になっています。令和元年12月4日成立(令和元年法律第70号)、12月11日公布です。
会社法自体は、比較的最近にできたものです。平成17年に制定され,平成26年に改正されました。その際、平成26年改正法の施行後2年を経過した場合において,企業統治に係る制度の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて,社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとされていました。
今回の改正は、それをうけたもので、「株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図るため,会社法の一部を改正」するものです。
第1 株主総会に関する規律の見直し
「株主総会資料の電子提供制度の創設」
現行法上は,インターネット等を用いて株主総会資料を株主に提供するためには,株主の個別の承諾が必要とされていました。
⇒改正により、2点が加わりました。インターネットの普及によるものです。
• 株主総会資料をウェブサイトに掲載し,株主に対してそのアドレス等を書面で通知する方法により,株主総会資料を株主に提供することができる制度を新たに設ける。
• 書面での資料提供を希望する株主は,書面の交付を請求することができる。
「株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備」
一方、一人の株主が膨大な数の議案を提案するなど,株主提案権の濫用的な行使事例が発生し,権利の濫用と認められた裁判例もあることを受けて、
⇒改正により制限が設けられました。
• 株主が提案することができる議案の数を10までとする上限を新たに設ける。
第2 取締役等に関する規律の見直し
役員報酬の規律、役員の責任を追及する訴えが提起された場合の賠償金の補償、役員の賠償責任保険についての規定が設けられています。
• 取締役の報酬に関する規律の見直し
• 会社補償に関する規律の整備
• 役員等賠償責任保険契約に関する規律の整備
また、上場会社は,社外取締役を置くことで客観的な事業運営を行うことを義務付けています。
• 業務執行の社外取締役への委託
• 社外取締役を置くことの義務付け
第3 社債の管理等に関する規律の見直し
• 社債の管理に関する規律の見直し
社債の金額が1億円以上である場合等、自ら社債を管理することができる場合、社債管理補助者に社債の管理の補助を委託することができる制度を新たに設ける。
• 株式交付制度の創設
完全子会社とすることを予定していない場合であっても,株式会社が他の株式会社を子会社とするため,自社の株式を他の株式会社の株主に交付することができる制度を新たに設ける。
その他
これらの項目は、いずれも重要なものだと思います。特に、最後の項目の「成年被後見人」に関する欠格条項の削除は他の法令と整合を図ったものです。
• 社債権者集会の決議による元利金の減免に関する規定の明確化
• 議決権行使書面の閲覧謄写請求の拒絶事由の明文化
• 会社の支店の所在地における登記の廃止
• 成年被後見人等についての取締役の欠格条項の削除及びこれに伴う規律の整備
実際に、会社の定款や事業運営に立ち入らなければ、あまりなじみのないものかと思いますが、今回の改正は、方向性として、平成26年の改正によって改正しっぱなしということではなく、経済や社会環境の変化(インターネットの普及、グローバル化の進展、企業経営の透明性の要請、社会の少子化など)を反映したものです。今後も引き続き、このような趣旨の改正が行われていくものと思われますので、契約に係る業務を引き受ける観点でフォローしていきたいと思います。