「煮ても焼いても食えない資格」にならないために
いろいろな資格があります。取得している資格をぞんぶんに活用している人もいれば、せっかく苦労して資格を取得したのに使いこなせないというケースもあります。自動車の運転免許の「ペーパードライバ」もそのような事例かと思います。
以下、私の事例なので、制度そのものを批判するものではありません、と前置きをしておきます。
行政書士は「食えない」ということをいう人がいます。 よく聞くと、資格を持っているだけで「チャリン・チャリン」とお金が入ってくることが期待できない、ということを指しています。他の資格のように「業務独占」の範囲が限られているということがあると思います。
行政書士法上は「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成は、行政書士の業務となっています。
「権利義務又は事実証明に関する書類」としては、遺産分割協議書、各種契約書、念書、示談書、協議書、内容証明、告訴状、告発状、嘆願書、請願書、陳情書、上申書、始末書、定款など、
「事実証明に関する書類」としては、実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、現況測量図等)、各種議事録、会計帳簿、申述書など、多数あります。
ただし、問題は、これらの書類のなかには、行政書士だけではなく、他士業者も作成できる書類が含まれています。「だから、仕事が順調にまわってこない」ということであれば、そのとおりかと思います。
でも、これだけでは、「食えない」ことの証明にはなりません。すくなくとも、「やることができる」範囲が明確に定義されています。
世の中には、もっと「食えない」資格があります。私の経験では「技術士」がそれに該当します。技術士法の第2条に、技術士とはなにかという定義が記されています。
「登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。」
つまり、業務独占ではなく、高度な資格であることを名乗れる「名称独占」というところが、決定的につらいところです。さらに、高度な専門性ということが、かえって一般の人を近づけないバリアを作っているように思えます。
「どちらが、より食えないのか」を論じることが今回の目的ではありません。 資格を持っていることで黙っていても仕事はやってきません。行政書士は、やはり、「頼れる街の法律家」として、市民のなかに溶け込み、法手続きにまつわる課題を一緒になって考え、「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成の知見を活かし、解決の方策を指し示すことで、ひとつひとつ信頼を得ていくことが肝要だと思います。
資格をいろいろ持っていても役に立たず、「煮ても焼いても食えない資格」にならないために。